SSI工法
SSI工法は、(財)鉄道総合技術研究所と旧日本道路公団試験研究所との共同開発による塩害抑止工法です。コンクリート中の塩分に直接作用する「塩分吸着剤」を活用して、他の防錆工法では実現できない下記の特長により、抜本的かつ長期的に塩害を抑止します。
-
塩分吸着のメカニズム
塩分吸着剤は正(+)に帯電させた層状構造を持ち、塩化物イオン(Cl-)を吸着し、予め保持させた亜硝酸イオン(NO2-)を放出します。
-
鉄筋腐食防止のメカニズム
SSI工法が従来の工法と決定的に異なるのは、鉄筋およびその周辺の塩分を低減し、鉄筋の腐食を長期的に抑止することです。
SSI工法の3大特長
1
鉄筋の錆は、ケレンによって完全に除去することは不可能です。鉄筋表面の残存錆層に存在する塩分を吸着し、錆の進行を抑止します。
長期暴露試験と鉄筋腐食抑止効果
スラブを模擬した大型供試体を海塩環境に暴露し、腐食した鉄筋について、一般防錆材と塩分吸着剤を含む防錆材との比較試験を行いました。3年経過後に鉄筋の残存錆の状況を分析した結果、塩分吸着剤の作用が明らかになりました。
(a)一般防錆材
-
鉄筋断面の電子顕微鏡写真
-
X線分析による塩化物の分布
(b)塩分吸着剤を含む防錆材
-
鉄筋断面の電子顕微鏡写真
-
X線分析による塩化物の分布
2
塩分吸着剤を含む防錆材は、鉄筋表面やその周辺のコンクリート躯体中の塩分を低減し、コンクリートの品質を改善します。
SSI工法の施工と防錆環境化
飛来塩分の影響で鉄筋腐食が発生した海岸沿いの橋梁の桁(写真1)及び、土中から吸い上げた塩分の影響で鉄筋腐食が発生した海岸に近い高架橋の橋脚下部(写真2)を、SSI工法で補修しました。施工後、補正自然電位を追跡調査した結果、経年とともに腐食環境から防錆環境へ移行し、安定していることが分かりました。
-
塩分吸着のメカニズム
写真1:海岸沿いの橋梁外観
-
鉄筋腐食防止のメカニズム
写真2:海岸に近い高架橋全景
3
SSI工法材料は、コンクリート躯体と同質のポリマーセメント系で構成し、部分断面修復後のマクロセル腐食対策としても有効で、高耐久性を実現します。
施工の基本パターン
防錆材として作用する防錆ペーストを大幅に高性能化しました。その結果、併用していた防錆モルタルを省略することが可能となり、接合界面を減らすことにより、施工の簡素化と品質の向上を実現しました。
塩化物イオン量による施工パターンの選定
鉄筋位置の塩化物イオン量 | 施工パターン | ||
---|---|---|---|
Sa断面※1 | Sd断面※2 | ||
高性能防錆ペーストSJ1塗布厚(使用量) | |||
2㎏/㎥未満 | 1㎜(1.4㎏/㎡) | 塗布厚は設計要領を参考に設定 | |
2㎏/㎥以上4㎏/㎥未満 | 2㎜(2.8㎏/㎡) | ||
4㎏/㎥以上6㎏/㎥未満 | 3㎜(4.2㎏/㎡) | ||
6㎏/㎥以上8㎏/㎥未満 | 4㎜(5.6㎏/㎡) | ||
8㎏/㎥以上10㎏/㎥未満 | 5㎜(7.0㎏/㎡) | ||
10㎏/㎥以上 | - |
※1:Sa断面は、鉄筋が部分的な表面錆(点錆・面錆)以下に限定して適用
※2:Sd断面は、鉄筋が広範囲な表面錆以上に適用
断面修復材の選定
断面修復材 | 施工方法 | 圧縮強度(σ28) | 付着強度(σ28) |
耐久モルタルRP100※3 | 左官・吹付 | 30N/㎟以上 | 1.5N/㎟以上 |
遮塩モルタルRP200 | 左官・吹付 | 30N/㎟以上 | 1.5N/㎟以上 |
遮塩モルタルRP310 | 左官・吹付 | 40N/㎟以上 | 1.5N/㎟以上 |
遮塩モルタルRP310G | 充填 | 40N/㎟以上 | 1.5N/㎟以上 |
超速硬高強度遮塩モルタルRP500 | 左官 | 80N/㎟以上 | 1.5N/㎟以上 |
※3:RP100は塩分吸着剤を配合しない断面修復材であり、内的塩害でのみ適用可能